先日読んだ本に書いてあったことですが、慣れきったもの、ありきたりのもの、普通のものを、人は観よう、感じようとしないようです。
脳が、効率的に活動できるよう、見ること、感じることを省略するようなのです。
心理学の実験で、被験者に自分が普段つけている腕時計の絵を描いてください、といっても、ほとんどの人が正確には描けないといいます。
毎日、何度でも見ている、腕時計のデザインでさえそうなのです。
しかし、そのようなありふれた日常アイテムも、じっくりと観察すれば、けっしてありきたりではなく、様々な発見があり、喜びがある、といいます。
死を宣告された人が、見慣れた道、風景が違ったものに思え、キラキラ輝いて観える、というのは、残された少ない時間が愛おしく、目の前をじっくりと観察しようとするからではないでしょうか?
花鳥風月を楽しむのは、あらゆるものをじっくりと観察しようとする気持ちが必須でしょうが、絵を描いたり、造形物を制作したりする時も、じっくりと目の前のモチーフを観察するのはとても大切だと思います。
僕は、動物をモチーフにすることが多いのですが、見慣れた動物、たくさん作ってきた動物ほど、要注意です。
初めて製作するモチーフ、特に造形的にユニークな動物、生き物は、自然と細かいところまで、じっくり観察することになるのですが、既存の動物、例えばネコに似ている動物などを制作するとき、頭の中で出来上がった猫のイメージで無意識のうちに制作するので、観ているようで観ていない、ということが実際起こります。
恥ずかしい話ですが、一番よく制作するネコにしても、何十年も思い込みで誤ったイメージを抱いていた部分があり、正確な肉球の形は、つい最近理解したことを白状しておきます(漫画で描かれる省略形の肉球を、現実の肉球と思っていた。)。
キツネにしても、長い間、先端、耳、手足、しっぽがすべて黒いのがスタンダートと思い込んでいましたが、それはむしろ少ない方で、しっぽが白い、あるいは茶色のほうが多い、ということを、つい最近気づきました。現在は、先端が全部黒い方がデザイン的に美しいので、あえて黒くしていますが、他にも、観察不足で、多くの思い違いをしていることでしょう。
見慣れたものほど、しっかりと観察する、ということを習慣にできればいいのですが・・・・。
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