アルチンボルド展

昨日東京上野の、国立西洋美術館で開催されている、アルチンボルド展に行ってきました。

野菜や果物を組み合わせた奇妙な肖像画を、ご存知の方も多いでしょう。

僕は、この展覧会が開催されることになって、テレビやネットで色々な情報が入ってくるまでは、てっきりこの画家は、際物的な存在だと思っていましたので、まさか自分がに行くことになるとは思いもしませんでした。

今回の展覧会で、アルチンボルドが、ルネッサンス期のイタリアミラノ生まれであったこと、ハプスブルク家お抱えの宮廷画家であったこと、16世紀当時、一世を風靡した人気画家であったこと、一度は忘れ去られ、ダリなどのシュールレアリスムの画家達により再評価されたことなど、マスコミが流すニュースで事前知識を仕入れて、観にいきたくなり、上野まで出向いたのですが、それでも観るまでは、奇抜さが売りの、異端の画家という先入観は拭えないままでした。

アルチンボルドが単に奇抜さだけを売りにした画家でないことは、作品を観れば明らかで、特に連作「四季」は圧巻でした。絵それ自体の質感が高いのはもちろんのこと、春夏秋冬夫々が芳醇なアイデア、イメージに溢れ、しばし立ち尽くしました。しばらく見つめていても、飽きないくらいイメージが画面いっぱいにあふれ出ていました。同時代にアルチンボルドの追従者の画家が、同じアイデアで描いた絵が何点か、並べて展示されていましたが、これを観ても、単に思いつきで描かれた絵ではないことが、わかります。

様々な動植物は正確にデッサンされていて、ハプスブルク家の財力で世界中から集められた珍しい動植物を、アルチンボルドは、実際に実物を見て描いたそうです。

そういう意味では、この画家は環境にも恵まれていた、と思います。

それにしても、一旦忘れられた画家が、シュールレアリスムの画家達に再発見され、そのお陰で、こうして自分も日本で作品を観ることが出来る訳ですが、時代が早すぎたせいで、忘れさられた画家が、まだまだ沢山いるかと思うと、少し残念な気がしてなりません。

そういえば、今では大変な人気の伊藤若冲も、明治時代に一旦忘れさられ、アメリカ人収集家に発見されて、再評価されたことを、ふと思い出しました。