平櫛田中(ひらぐしでんちゅう)をご存知ですか?
「六十七十は 鼻たれ小僧 おとこざかりは百から百から」という言葉で有名な、死の直前まで制作し続けた、日本を代表する彫刻家です。
明治5年(1872)に生まれ、昭和54年(1979)に、107歳で亡くなったのですが、僕がこの人に興味を持ったのは、100歳の時、30年分の材料を購入した、という話を聞いた時です。100歳の時点で、なんと、130歳まで作品を作り続けようとしていたのです。
(今回ネットで調べたところ、話は少し違っていて、いつでも制作に取り掛かれるようにと、金銭に余裕がある98歳の時に買いためていた材木が、100歳の時に、30年分残っていた、ということらしい。まあ、ほぼ同じことですが。)
「いまやらねばいつできる、わしがやらねば、だれがやる。」が口癖で、色々な伝説、逸話がありますが、もうひとつ有名なのが、90歳を超えるころ、70歳の友人の陶芸家と展覧会に行ったとき、もう一箇所、別の展覧会を観ていこうということになり、二人で歩いていたら、けっこう距離があり、くたびれた友人がタクシーを呼んだら、「若造の癖にだらしない」といって田中(でんちゅう)が、カンカンになって怒ったという話です。物凄いエネルギーの持ち主だったのです。なにしろ70歳が若造ですから。
晩年まで精力的に活躍した芸術家に、ピカソ(91歳)やバルテュス(92歳)、がいますが、晩年の創作活動は、彼らを遥かに凌駕し、まさにギネス級です。
(バルテュスについては、書きたいことがあるので、また別の機会にお話しします。)
おそらく、並みの人は、70歳後半あたりから、気力が衰え、創作意欲も枯れてくくるのでは、と思われます。
世界の巨匠と言われる人たちでも、ピカソなど一部の例外を除けば、自分の頂点のころの作品の劣化版のような作品を描く人、作る人が多いのでは?
作家の横溝正史が、晩年「田中(でんちゅう)さんには及びもないが、せめてなりたやクリスティ(推理小説作家のアガサクリスティ。85歳で亡くなったが、死の直前まで書き続けた。)」といったようです。
平櫛田中のことを思えば、自分にもまだ膨大な時間が残されていることになり、とても勇気づけられます。
さて、80歳の時、自分はどれくらいの意欲、気力が残っているのでしようか。
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