元々陶人形作家としてスタートした身としては、ぬいぐるみが主体となっても、様々な箇所で粘土を使用しています。
今回は、2回に分けて、自分が使用する粘土の種類とメリットデメリットについてお伝えします。
まず、一番使うのが樹脂粘土と石粉粘土です。
樹脂粘土については、当初パジコのモデナを使っていましたが、ダイソーの樹脂粘土でも、なんら遜色がないことがわかってからは、ダイソーのものを使っています。
用途は、目玉、爪など、半透明の質感を出すとき。
メリットはいったん固まったら、形が崩れたり、欠けたりしないこと。デメリットは乾燥に日数を要すること、さらに乾燥する途中で多少歪むこと。また乾燥したら、加工が難しいこと、でしょうか。
これの対局が石粉粘土で、メリットは、乾燥後も細かい加工がしやすいこと。紙やすりなどで繊細な加工が出来るので、鼻や口などに使用します。パジコの製品(ラドール)が圧倒的に良いので、これ以外は使いません。
乾燥に日数を要しますが、オーブンで焼けばすぐに固まります。デメリットは、樹脂粘土と比較すると、脆いこと。落としたりすると欠けることがあります。
次に良く使うのが、紙粘土(こちらもパジコ製が良いと思います。100均の製品は使えません。)。
これは、鼻や口、その他色々な部分(カッパの甲羅とか。)に使います。メリットは柔らかいので、針を通せること。布をかぶせて縫うと、多少の弾力もあり、粘土が入っているのがわからないほど、ぬいぐるみに馴染みます。
デメリットは、石粉粘土や樹脂粘土のように尖ったものなど、細かい表現が難しいこと。
乾燥に日数を要すること(オーブンで焼くと、お餅のように膨らみます。)。
木粘土はチビシリーズの手足に使っていますが、木の質感を出したいときだけに使います(これもパジコ製)。石粉粘土ほど細かい加工は難しいですが、紙粘土よりは加工しやすいでしょう。
次回は、オーブン粘土、陶土、油粘土等についてご紹介していきます。
モノを作って売る上で、一番大切なことで、一番難しいことに、自分の作品を第三者目線で客観的に評価する、ということがあげられます。
売る気がなく、ただ作るだけなら、自分の好きなように、納得がいくように作れば良いので、そんな面倒なことは必要ないのですが、売るためには、他人に評価される必要があります。
自分の作品を客観的に見ることは至難の業ですが、特に作った直後は、第三者の目で見ることは、極めて難しいと言えます。
しかも、その第三者にどのような人を想定するかで、評価も、もの凄く異なってきます。
一般的な嗜好の人か、マニアックな人かで真逆なくらい評価が異なる場合もあるでしょう。
ボクの場合、作った直後は自分の作品に対して、ものすごく甘くなっているので、極力第三者的な目ではみないようにしています。
作成後、しばらく経過(1~2週間から1ヶ月後位)してから、意識的に第三者の目でみるようにしていますが、その場合は、あえて一般的な嗜好の人の目で見るようにしています。
その点、SNSは短時間に大勢の目にさらされ、それがダイレクトに「いいね」やコメント数に現れるので、わりと客観的評価として参考にしていいと思います。
しかしながら、これらSNSは写真の出来不出来にかなり左右されるので、実際にイベントやネット販売に出したときに、「こんなはずじゃなかったのに」ということになる場合が多々あります。
面白いことに、自分の作品を制作してから1年以上経過して見ると、かなり客観的に見ることが出来ます。
まあ、その当時は気づかないでいた、欠点や、いたらない箇所が、はっきりクリアにされる場合が多いようです(ガックリしますね。)
思い入れがある作品ほど、欠点や弱点に気づきにくい、といのは本当に困ったモノです。
今、ボクは動物のぬいぐるみを制作のメインとしています。
このジャンルの王道はクマですが、テディベア作家では、クマだけをメインに作っている方も多いようです。逆にクマは作らない、という方は少数派でしょう。
クマを作る人は、他の動物を作るにしても、精々他に2~3種類の人が多いと思います。
ボクの作品に興味がおありの方は既にご承知の通り、制作する動物(生物)の種類はやたらと多いです。
先日数えたところ、ざっと30種類以上(犬は犬種ごとに1種類とカウント)の生き物を作ってきました。この数には自分でもビックリです。さすがに、これだけ多くの生き物を作っている人は少ないと思います。
これには、二つの理由があり、
まず、とにかく新しい試みが大好きだと言うこと。未挑戦の生き物を作るのは、本当にワクワクします。
作ったものの、さっぱり人気がない、ということも多々あるのですが、それでも挑戦したいので、臆せず作っています。もう売れなくても、楽しんだから良いか、と開き直っています。なので、過去一回しか作ったことのない生き物も、結構あります。
二つめの理由としては、メジャーな動物、特にクマは、作る人が多く、激しい競争率なので、展示会でも中々観てもらえない、という理由もあります。
買ってもらえなくても珍しい動物は、お客さんの足を止めますから。
ただ作る人が極端に少ない生き物は、その生き物自体に魅力がないので、手を出しにくいのですが、深海魚やハイエナなどをチャーミングに作る人もいるので、どう作るかは、作り手の腕次第なのですが。
まだ未挑戦で、これから作ろうとしているのが、ロバ、カバ、カピパラ、リス(これらは陶人形としては制作したことがあります。)、それに全く未経験のキリンです。
こうして書き出すだけでもワクワクしてきますね。
ものを作って販売する上で、両立しないことは沢山有ります。
例えば、一般受けを狙うか、自分が納得するものに拘るか。
一作にタップリ時間をかけて高く売るか、程ほどの仕上げで沢山売るか。
明るい穏やかな雰囲気で作るか、ダークな雰囲気で作るか。
スタイリッシュでいくか、可愛いでいくか。
挙げ出したらたらキリがないくらい、沢山の並び立たない選択があります。まあ、大きく作るか小さく作るかの選択なら、作風を崩すことなく両方作れば良いのですが、作り手が持つ世界観・作風と矛盾するものが混ざっていると、購入する側を混乱させるだけです。
この点は自分でも理解しているのですが、えてして、他人の素晴らしい作品に出会うと、自分の選択を棚に上げて、スタイリッシュな作風はおしゃれでいいなあ、ダークな雰囲気は素敵だなあ、たっぷりと時間をかけて作った作品は見事だなあ、それに引き換え自分の作品は・・、と思ってしまう自分がいます。
自分の方向性や嗜好を信じれば良いのですが、一時的に自分がなにを選んだのか忘れて反対側に憧れてしまうのです。
過去、しばしばこれで自分が迷ってしまったので、時々振り返って、自分の選択は間違っていないか、自分に合っているのか、確認するようにしていますが。
結局、「いいとこどり」は出来ないのに、「いいとこどり」をしたがるのは、強欲というものですが、それでも(不可能なのに)両方欲しい、両方やりたい、と思ってしまう自分が、時々顔を出すのです。
自分のスタンスや作風を大幅に変えるのは、もの凄く勇気がいるしリスクが伴うので相当な覚悟が必要ですが、もし変えたとしても、しばらくしたら、前の方が良かったかも、と思ってしまいそうです。
結局、作り続ける限り、自分は、迷っているのだろうな、という話でした。